USPTOにおけるPIER対象出願の選定と特許期間への影響

米国国内段階への移行を既に終えた出願人に対し、審査を進めるかどうかの判断を求める追加の通知が発せられるようになった。米国特許商標庁(USPTO)のPCT Informed Examination Request Pilot Program(PCT情報に基づく審査請求パイロットプログラム。以下「PIER」という)は、選定された出願の出願人に対し、PCT国際段階の成果物を検討した上で、審査を進めるか、審査を12か月延期するか、又は出願を明示的に放棄するかを選択するよう求める。この通知に応答しなければ、出願が放棄扱いとなり得る。See U.S. Pat. & Trademark Off., USPTO Implementing Examination Request Pilot Program for National Stage Applications (Apr. 8, 2026), https://www.uspto.gov/subscription-center/2026/uspto-implementing-examination-request-pilot-program-national-stage.
USPTOが公表した対象出願の選定期間は、2026年4月9日から2027年4月9日までであり、延長又は早期終了の可能性がある。PCT Informed Examination Request Pilot Program, 91 Fed. Reg. 17,949, 17,950 (Apr. 9, 2026) [hereinafter PIER Notice]. PIERは、選定された国内段階出願の出願人に対し、実体審査の開始前に、出願手続の方針に関する重要な判断を求める。その実務上の意義には、USPTOによる通知の発出、出願人の選択、及び応答の時期がもたらす影響が含まれる。したがって、この制度の価値は、出願人の費用負担、権利取得の遅れ、及び特許期間への影響を考慮した上で、出願手続に関する判断と審査効率を改善するかどうかによって評価すべきである。
どのような出願が選定されるのか
PIERは、35 U.S.C. § 371に基づく国内段階出願のうち、選定された未審査の出願に適用される。§ 111(a)に基づいて提出された出願は対象外であり、同項に基づくPCTバイパス継続出願も含まれる。参加の可否はUSPTOが決定し、制度への参加、参加回避、又は対象からの除外を求める申立ては認められない。U.S. Pat. & Trademark Off., PCT Informed Examination Request Pilot (PIER) Program, https://www.uspto.gov/patents/basics/international-protection/patent-cooperation-treaty/pier-program (last visited Oct. 17, 2026) [hereinafter PIER Program Page]. 選定されるのは、審査前の事務処理を完了した出願に限られる。PIER Notice, 91 Fed. Reg. at 17,950.
実施開始の発表では、官報告示に示された対象要件よりも詳しい選定方針が説明されている。選定に当たっては、係属期間の長い技術分野において、出願からの経過期間が考慮される。当初、USPTOは、今後5~6か月以内に審査官へ配付されると見込まれる出願を選び、国際段階の成果物にX又はYのカテゴリーに分類された文献が少なくとも1件含まれる出願を優先する方針を示した。U.S. Pat. & Trademark Off., USPTO Begins Issuing Requirements for Information Under the PIER Pilot Program for National Stage Applications (May 21, 2026), https://www.uspto.gov/subscription-center/2026/uspto-begins-issuing-requirements-information-under-pier-pilot-program [hereinafter Implementation Announcement].
X文献は、その文献単独で新規性を否定し、又は技術常識を考慮した場合に進歩性を否定すると判断された文献を意味する。Y文献は、他の文献との組合せによって進歩性を否定すると判断された文献を意味する。これらの分類は、重要となり得る先行技術を示すものであり、それ自体が米国における請求項の拒絶を意味するわけではない。See U.S. Pat. & Trademark Off., Manual of Patent Examining Procedure § 1844.01(VII)(A)(1) (9th ed. rev. 01.2024, Nov. 2024) [hereinafter MPEP].
X又はYの文献が存在することは優先要素であるため、肯定的な見解が得られていても対象から除外されるとは限らない。公表された制度資料には、出願からの経過期間に関する固定的な基準、選定割合、対象となる審査部門の網羅的な一覧、又は詳細な抽出方法は示されていない。したがって、出願人は、公表された要素だけから選定の有無を予測することはできない。See PIER Program Page, supra; Implementation Announcement, supra. ポートフォリオを管理する代理人は、有利な調査結果や最近の補正によって通知を回避できるとは考えず、対象となり得る出願を継続して確認すべきである。
PIERの情報提出要求への対応
発せられる要求には、様式PTO-2357及び文書コードPIER.RFIが用いられる。Implementation Announcement, supra. その根拠は、情報提出要求の手続を定める37 C.F.R. § 1.105である。PIERの要求に対する応答期間は2か月であり、§ 1.136(a)に基づき、通算6か月まで延長できる。PIER Notice, 91 Fed. Reg. at 17,950; MPEP § 704.13. 代理人は、通知を依頼人に報告する際、当初の応答期限と最終的な応答可能期限の双方を期限管理に登録すべきである。
応答には、様式PTO/SB/478を使用しなければならない。適切な署名を付し、選択肢を必ず1つだけ選ぶ必要がある。電子提出の場合には、Patent Centerにおいて、文書コードPIER.REPLYに対応する文書種別「Reply PIER Pilot」を使用しなければならない。U.S. Pat. & Trademark Off., PIER Pilot Program—Reply to Requirement for Information Under 37 CFR 1.105, Form PTO/SB/478, at 1 (Apr. 2026), https://www.uspto.gov/sites/default/files/documents/sb0478.pdf [hereinafter PIER Reply Form]. 必要に応じて、所定の選択を行う応答とともに予備補正を提出すべきであるが、補正書だけでは所定の応答要件を満たさない。See PIER Program Page, supra.
要求された情報が不明である、又は容易に入手できないと述べる回答は、PIERにおける適切な応答とはならない。告示は、審査を進めるかどうかの判断にさらに時間を要する場合には、12か月の延期を選択できることを示している。PIER Notice, 91 Fed. Reg. at 17,951.
不完全な応答を、判断のための時間を確実に追加取得する手段と考えるべきではない。誠実な応答の試みであるものの、不注意により要件の一部が欠落した場合には、補正の機会を与える不備通知が発せられることがある。ただし、その取扱いは裁量によるものであり、意図的な欠落を正当化するものではない。補正期限は実際の不備通知に基づいて管理しなければならず、不完全な書面を繰り返し提出しても、期限を無制限に延長することはできない。See 37 C.F.R. § 1.135(c); MPEP § 704.12(c). 通知に実体的な拒絶理由が含まれていなくても、放棄扱いを避けるために必要な完全な応答を提出しないことには、重大な手続上の結果が伴う。See 37 C.F.R. § 1.135(a)–(b).
3つの選択肢の検討
審査を進めることを選択すると、出願は審査官への配付に向けて進む。出願人は、予備補正を提出することもできる。PIER Program Page, supra. 商業上重要な発明については、審査を進めることで、通常、1年間の延期を確定させることによる戦略上の不確実性を回避できる。代理人は、補正の必要性を実質的に評価し、現在の商業的な利用態様に請求項をより適合させられるかどうかを説明すべきである。
より早期の審査を希望する出願人は、特許審査ハイウェイ(PPH)の利用を別途検討すべきである。PPHは、要件を満たす肯定的な審査成果と、それに対応する請求項に基づき、審査を促進する制度である。代理人は、実体審査の開始前に利用要件を検討し、米国出願におけるすべての請求項が、適用される請求項の対応関係に関する要件を満たすことを確認すべきである。See U.S. Pat. & Trademark Off., Implementation of the Global and IP5 Patent Prosecution Highway (PPH) Pilot Programs with Participating Offices § III.A(3)–(4), at 2–3, https://www.uspto.gov/sites/default/files/documents/global-ip5.pdf (last visited Oct. 17, 2026). PIERで審査を進めることを選択しても、それ自体によってPPHの取扱いが付与されるわけではない。別途PPHを申請する場合には、必須であるPIERへの応答と整合するよう手続を進めなければならない。
延期を選択した場合の期間は、USPTOがその請求を受領した日から12か月であり、§ 1.103に基づく通常の審査中断又は延期に必要な処理手数料は不要である。承認後は、PIERによる延期期間を途中で終了させることはできない。PIER Notice, 91 Fed. Reg. at 17,951–52. 出願人が資金調達、市場評価、又はライセンス機会に追加費用を投じる価値があるかどうかの判断に時間を要する場合には、この選択が合理的なこともある。ただし、その判断に当たっては、事情が急速に変化する可能性も考慮すべきである。製品発売の予定や権利行使の必要性によっては、審査を早期に再開できないことによる不利益が、当面の費用節減を上回る場合がある。
明示的放棄には、より明確な指示が必要となる。代理人は、依頼人が当該出願を手放す意図を有することを確認し、提出前に継続出願の戦略を検討すべきである。署名権限も重要である。記録上の代理人ではなく、代表資格(representative capacity)のみに基づいて行為する実務家は、継続出願を提出する場合には先の出願を明示的に放棄できるが、この例外により、他の出願手続書類に署名できるすべての実務家が通常の放棄手続を行えることになるわけではない。37 C.F.R. § 1.138(b); MPEP § 711.01.
この例外を利用する場合には、継続出願を前提として当該出願を明示的に放棄する旨を記載した別個の書面を、PIERへの応答に添付しなければならない。それ以外の場合、放棄を選択する応答には、記録上の代理人又は法人その他の団体ではない出願人が署名しなければならない。PIER Notice, 91 Fed. Reg. at 17,951. 告示は、その他の適切な署名がある放棄の選択については、別個の放棄請求の添付を推奨するにとどまるが、代表資格のみに基づいて行為する実務家については、別個の書面の添付が義務付けられている。Id.
パイロットプログラムの告示は、PIERに応じて出願を放棄しても、§ 1.138(d)に基づく調査手数料又は超過請求項手数料の返還は受けられないことを確認している。PIER Notice, 91 Fed. Reg. at 17,951. 同規則自体も、この返還制度の対象を、§ 111(a)及び§ 1.53(b)に基づいて提出された所定の出願に限定している。したがって、これらの§ 371に基づく出願は、従前から同返還制度の対象ではなかった。37 C.F.R. § 1.138(d); MPEP § 711.01(III). 放棄の主な経済的合理性は、今後の出願手続費用を回避することにある。
国際段階の成果物の活用
国際調査報告及び国際調査機関の見解書は、係属中の請求項を評価する上で有用な出発点となる。その後に作成されたPCT第II章に基づく報告書があれば、追加の分析が得られることもある。これらの見解は予備的であり、拘束力を有しない。PCTは、各国の特許庁が独自の特許性判断基準を適用することを認めている。Patent Cooperation Treaty art. 33(1), (5), June 19, 1970, 28 U.S.T. 7645, 1160 U.N.T.S. 231; MPEP § 1845.01(V). したがって、国際段階で否定的な見解が示された場合には、米国でも必ず同じ結論になると考えるのではなく、引用された先行技術と実際の米国請求項を分析すべきである。
PIERの所定様式が求めるのは選択肢の指定であり、国際段階の各指摘に対する実体的な反論や、国際段階の分析が正しいとの承認ではない。See PIER Reply Form, supra, at 1. 代理人は、その見解が以前の請求項を対象としていたか、補正によって関連する限定事項が変更されたか、及び引用文献の開示が審査官の論理を裏付けるかどうかを検討できる。ある限定事項によって妥当な相違点を示しつつ、商業上有用な範囲を維持できる場合には、補正によって実体審査前に出願を改善できることがある。現行の請求項が引き続き正当化できるのであれば、選択の提出を求められたこと自体は、権利範囲を縮小する理由にはならない。
補正には、通常の予備補正に関する規則が引き続き適用され、庁通知(Office action)の作成を不当に妨げる場合には、補正が認められない可能性もある。37 C.F.R. § 1.115. 手続の調整が重要となる。代理人は、補正をPIERにおける選択と併せて検討し、その手続上の影響を評価せずに書面を小分けに提出することを避けるべきである。
先行技術に関する記録にも注意が必要である。国内段階出願では、審査官は、国際調査報告(ISR)に引用され、電子包袋で利用可能な米国特許文献を考慮する。また、その他の引用文献についても、様式PCT/DO/EO/903に示されるとおり、必要な写しが記録に存在する場合には考慮する。考慮を受けるために、必ずしも別途文献一覧を提出する必要はない。一方、引用文献を発行特許に掲載することは別の問題であり、適切な情報開示陳述書(IDS)を提出すれば、確実な記録を残すことができる。MPEP §§ 609.03, 609.06; 37 C.F.R. §§ 1.97–.98. この国内段階の取扱いがバイパス継続出願にも適用されると考えるべきではない。MPEPは、その継続出願において国際段階の引用文献を確実に考慮してもらうため、IDSの提出を別途求めている。MPEP § 609.02(I).
特許期間への影響
特許期間調整(PTA)に対する第1の影響は、要求が発せられること自体から生じる。国際出願では、最初の通知に関する法定の14か月の期間は、国内段階の開始日から起算される。35 U.S.C. § 154(b)(1)(A)(i)(II); 37 C.F.R. § 1.703(a)(1). PIERの告示は、要求の発送によって、この最初の通知に関する義務が履行されるとしている。PIER Notice, 91 Fed. Reg. at 17,951. MPEPも、PTAの計算上、§ 1.105に基づく要求を§ 132に基づく通知として扱うことを認めている。MPEP § 2731(I)(A).
そのため、PIERの要求が発せられると、請求項について実体審査が行われる前に、最初の通知の遅延に関する期間が終了し得る。ただし、既に同条項に基づいて発生した遅延が消滅するわけではなく、要求の発出によって、その他すべての期間調整の可能性が決まるわけでもない。代理人は、出願経過を評価する際、法定要件を満たす最初の通知の日と、最初の実体審査上の通知の日とを区別すべきである。See 35 U.S.C. § 154(b)(1)(A)–(C); 37 C.F.R. § 1.703(a), (f).
審査を進めることを選択した完全な応答を提出した場合には、USPTOによる応答について通常適用される4か月の期間も検討対象となる。一般的なPTA規則を適用すると、その応答から4か月以内に、要件を満たす庁通知又は特許許可通知が発送されなければ、適用される制限及び減算を前提として、追加のA遅延が発生する可能性がある。See 35 U.S.C. § 154(b)(1)(A)(ii); 37 C.F.R. § 1.703(a)(2); MPEP §§ 704.12(c), 2731(I)(B). これは通常のPTAの枠組みによる帰結であり、PIERが別途、4か月以内の実体審査を約束するものではない。
第2の影響は、延期請求から生じる。様式は、その12か月を、§ 154(b)(2)(C)及び§ 1.704(c)に基づく出願人側の遅延として扱うことを明示している。PIER Reply Form, supra, at 1. この期間は、本来認められるPTAから差し引かれるが、特許の満了日が必ず丸1年前倒しになるわけではない。最終的な計算では、USPTO側の遅延、出願人側の遅延、及び適用される重複期間の調整規則を考慮する。See 35 U.S.C. § 154(b)(2)(A), (C); 37 C.F.R. §§ 1.703(f), 1.704(a), (c).
延期は、PTAとは別に、特許の実務上の価値にも影響し得る。国内段階出願から発行される特許では、通常の20年という期間は、原則として国際出願日又は期間計算上の基礎となる、より早い非仮出願日から起算される一方、付与された権利の期間は特許発行時に始まる。外国優先権又は仮出願に基づく利益は、通常、この20年の起算日を定めるものではない。PIERによる延期があっても、この計算が新たに始まるわけではない。延期によって特許発行が遅れ、満了日がそれに応じて延びなければ、失われるPTAが存在しない場合でも、特許発行後に権利を行使できる期間は短くなる。See 35 U.S.C. § 154(a)(2)–(3); MPEP § 2701(I)–(IV). 最終的な特許発行日の差が、12か月の延期期間と一致するとは限らない。
第3の影響は、応答の時期に関するものである。§ 1.704(b)に基づく出願人側の遅延は、USPTOがそれより短い応答期間を設定している場合でも、通常、3か月経過後から計算される。したがって、3か月目に提出された応答には、期限延長手数料が必要となっても、この特定のPTA減算は生じない場合がある。例えば、発送から2か月と20日後に完全な応答を提出する場合には、適切な期限延長手続が必要となるが、PTA上の3か月の基準を超える前の提出となる。3か月経過後の応答は、期限延長によって適時の提出となっても、この基準による計算の対象となる。See 37 C.F.R. §§ 1.136(a), 1.704(b); MPEP § 2732(II).
これらは、それぞれ異なる期間計算の規則である。延期の選択、要求に対する応答に要した時間、及び要求自体の発送は、それぞれ分析の異なる部分に影響する。不完全な応答や後日の追加書面も、通常のPTA規定に関係する可能性があるため、提出方針は記録全体を踏まえて検討すべきである。See 37 C.F.R. § 1.704(c)(7)–(8).
パイロットプログラムの評価
PIERには、出願人が引き続き権利化を希望する出願に審査資源を集中させる機会となる可能性がある。早期の見直しによって、改善すべき請求項や、もはや事業上の目的に資さない出願を特定できることもある。USPTOは、出願人の意思決定、係属出願件数、並びに審査の質及び効率を評価すると述べている。Implementation Announcement, supra.
告示は、参加者からの意見聴取を予定し、適切な範囲で、効果的なパイロットプログラムの設計に関する米国会計検査院(GAO)の優良実務に従うとしている。PIER Notice, 91 Fed. Reg. at 17,952. これらの実務には、測定可能な目標、明確な評価方法とデータ収集戦略、評価計画、制度拡大の可能性への配慮、及び利害関係者との意思疎通が含まれる。U.S. Gov't Accountability Off., GAO-16-438, Data Act: Section 5 Pilot Design Issues Need to Be Addressed to Meet Goal of Reducing Recipient Reporting Burden 5–6 (2016), https://www.gao.gov/assets/gao-16-438.pdf. したがって、USPTO自身が示した枠組みは、PIERの利益と負担の双方を評価する基礎となる。
評価に当たっては、新たな手続が生み出す費用も考慮すべきである。通知の報告、外国代理人を通じた指示の取得、国際段階の記録の検討、及び応答書の作成には、いずれも専門家の作業時間を要する。有益な検証では、これらの費用と、実体的な出願手続費用の削減額とを比較し、権利取得の遅れも考慮する必要がある。様式が短くても、ポートフォリオ全体では相当の調整作業が生じ得る。
選定過程の透明性を高めることは、その評価に資する。公表された方針では、出願からの経過期間、技術分野ごとの係属期間、審査官への配付見込み、及びX又はYの引用文献が考慮される。Implementation Announcement, supra. したがって、選定された出願と出願全体との間に結果の差があっても、それはこれらの特性を反映している可能性がある。選定に関する集計データを公表すれば、出願内容の秘密を明らかにすることなく、評価対象集団を説明できる。有益な評価では、出願からの経過期間、技術分野、配付の見込み、及び国際調査結果を考慮し、選定された出願と、それ以外の点では比較可能でありながら選定されなかった適格出願とを比較すべきである。また、審査を進める出願、延期する出願、及び放棄となる出願を含め、選定された集団全体を追跡する必要がある。審査を進める出願だけに分析を限定すれば、この制度が影響を与えようとしている処分結果が評価から抜け落ちる。
評価では、十分な検討を経た意思決定に基づく明示的放棄と、適時かつ完全な応答を提出しなかったために生じる放棄扱いとを区別すべきである。また、延期後に手続が再開される場合と、延期後に放棄に至る場合も区別する必要がある。これらの結果は、この制度が出願人の意思決定を改善するのか、それとも単に係属出願件数を変化させるのかという点で、異なる意味を持つ。期限徒過という事実だけでは、その出願に商業的価値がなかったとはいえない。各経路を最終的な結果まで追跡することで、制度の効果をより確実に測定できる。
成功の指標は、係属出願件数に加え、実体審査も追跡すべきである。出願の延期はUSPTOが審査する時期を変え、放棄は係属出願の集団から当該出願を除く。しかし、いずれの事象も、それだけでは審査官が妥当な特許性判断により効率的に到達できることを示さない。したがって、評価では、最初の実体審査上の通知、その後の出願手続に要する作業、延期後の結果、及び出願人の費用を追跡すべきである。これらの指標は、制度を拡大すべきか、また、どのように拡大すべきかについて、より有益な判断を支える。
別途実施されているApplicant Pre-Docketing Noticeパイロットプログラム(審査官配付前の通知制度)は、政策上の有益な比較対象となる。同制度は2026年5月29日に公表され、審査官への配付予定日の約3か月前に情報提供の通知を行う。出願人に対し、記録の更新、適切な補正やIDS関連書類の提出、及び保護を希望しなくなった場合の放棄の検討を促すものである。応答は義務付けられず、出願人が何もしなくても、出願は審査に向けて進む。U.S. Pat. & Trademark Off., Applicant Pre-Docketing Notice Pilot Program (May 29, 2026), https://www.uspto.gov/subscription-center/2026/applicant-pre-docketing-notice-pilot-program.
この代替的な制度は、PIERについて、手続の方針選択を義務化することがどれだけの追加的な利益を生むのかという、明確な検討課題を示す。事前通知だけでも、有益な見直しが促される可能性がある。PIERには、必須の応答、国際段階の成果物への着目、及び固定期間の延期という要素が加わる。USPTOは、両制度の対象集団、時期、及び誘因の違いを考慮しつつ、これらの要素の寄与を評価すべきである。両集団を、互いに置き換え可能な対照群として扱うべきではない。この比較の意義は、より広範な導入に先立って評価できる政策上の選択を明らかにすることにある。
実務における対応の枠組み
実務家にとって当面の課題は、必須の選択を依頼人の出願手続上の目的と結び付けることである。報告書面では、期限を明示し、利用可能な選択肢を説明し、延期が承認されると途中終了できないことを明確にすべきである。外国代理人を通じて指示を受ける場合には、出願人の判断を要する事項と、既存の記録に基づいて代理人が評価できる事項を、明確に示す必要がある。
実体面の検討では、現在の請求項及び商業上の目的を確認し、その上で、裏付けのある請求項補正又は情報開示陳述書の提出が適切かどうかを判断すべきである。提出書類は、依頼人が承認した選択を反映し、所定の様式要件を満たし、適切に記録へ取り込まれたことを確認する必要がある。延期が承認された場合には、事務所は承認通知を保管し、判断の基礎となった事業上の節目と併せて、延期期間の終了日を期限管理に登録すべきである。
PIERは、審査前に出願を再評価する有益な機会となり得る。個々の出願人にとっての価値は、適時の権利取得の必要性、請求項の強さと範囲、及び今後の出願手続費用によって異なる。迅速かつ十分な検討に基づく応答によって、出願人が選択した方針を維持しつつ、それに伴う特許期間への影響に対処できる。より広範な導入は、出願人に課される費用を考慮した上で、制度が出願手続に関する判断と審査効率を改善することを示す証拠に基づいて決定すべきである。





