特許公報の表紙にはなくとも、特許庁には提示済み――親出願の先行技術と§ 325(d)
- Brandon Theiss
- 8月29日
- 読了時間: 23分

エグゼクティブ・サマリー:本稿は、先行技術文献が対象特許の表紙面に記載されていなくても、親出願の審査過程で引用または考慮されていた場合に、米国特許商標庁(USPTO。以下「特許庁」という。)が35 U.S.C. § 325(d)に基づき裁量的に当事者系レビュー(inter partes review、IPR)の開始を拒否する根拠となり得るかを検討する。MPEP § 609.02によれば、直系の親出願で考慮された情報は、単に考慮を受けるためだけに再提出されなくても継続出願へ引き継がれ得るため、特許公報の表紙面よりも審査経過の方が高い証明力を有する。Advanced BionicsおよびEcto Worldの下では、当該文献が拒絶の根拠として一度も適用されていなくても、審査官がイニシャルを付した情報開示陳述書(IDS)により§ 325(d)の判断枠組みの第1段階が満たされ得るが、より重要なのは、申立人が特許性に関して重要な特許庁の誤りを立証しているかという点である。Kewazingaは、この原則を直系の先行出願に適用することについて有力な根拠を示すものの、この問題を正面から解決した連邦巡回控訴裁判所(Federal Circuit)の判決はなく、特許審判部(PTAB)も、その論理を兄弟出願または遠い傍系出願に一律に拡張することを拒んでいる。実務上の要点は、§ 325(d)の判断を左右するのは、単に文献が特許公報に掲載されたか否かではなく、実際の優先権系列、考慮されたことを示す証拠、クレームの連続性、および特許庁による従前の分析内容であるということである。
当事者系レビュー(inter partes review)において、よく見られる事実関係がますます重要になっている。申立書は、対象特許の表紙面に記載されていない文献に依拠している。しかし、その文献は、親出願または優先権系列に属する別の出願の審査経過には現れている。情報開示陳述書(IDS)に記載されている場合もあれば、オフィス・アクションに記載されている場合、さらには拒絶の中心的根拠となっている場合もある。特許権者が35 U.S.C. § 325(d)を援用するのに対し、申立人は、当該文献は対象出願で一度も引用されず、対象特許にも掲載されていないと反論する。
申立人による表紙面だけに依拠した議論は、単純に過ぎる。継続出願のファミリーでは、文献が子出願で再度列挙されず、子特許にも掲載されていないとしても、「特許庁に従前提示された(“previously presented to the Office”)」ことがあり得る。しかし、その逆の過度な一般化も同様に危険である。すなわち、親出願で提示されたからといって、必ずしもIPR開始の裁量的拒否が求められるわけではない。より適切な分析は、文献が「掲載されたか」、「提示されたか」、「考慮されたか」、および「実質的に検討されたか」という4つの異なる命題を区別した上で、実際の出願ファミリーの審査記録にAdvanced Bionicsの2段階の枠組みを適用することである。
形成されつつある規範は、一律的なものではなく、実務的なものである。直系の親出願で考慮された先行技術は、とりわけ対象クレームが親出願で審査されたクレームを踏襲している場合、§ 325(d)の判断において大きな役割を果たし、ときには決定的な意味を持つ。審査官がイニシャルを付した親出願のIDSに単に列挙されただけの先行技術であっても、§ 325(d)の判断枠組みの第1段階を満たし得る。しかし、特許庁が従前どの程度踏み込んで当該先行技術を検討したかは、通常、第2段階、すなわち申立人が特許性に関して重要な特許庁の誤りを立証したかという点で最も重要となる。また、出願間の関係が親出願から兄弟出願、さらに遠い傍系出願へと離れるにつれ、従前の審査が対象特許に「関係していた(“pertain[ed] to”)」との推認は著しく弱くなる。
I. 特許公報の表紙面は証拠であり、審査記録ではない
発行された特許の「References Cited(引用文献)」欄は、有用な証拠である。通常、この欄には出願人または審査官によって記録に組み入れられた文献が示されており、何が特許庁に提示されていたかを評価する際の便利な出発点となる。しかし、特許公報への掲載は、引用文献がどのような手続を経て記録に組み入れられたかに応じて生じる行政上の結果にすぎず、実体判断ではなく、§ 325(d)の法的基準でもない。
USPTO自身の手続も、この区別を明示している。Manual of Patent Examining Procedure (MPEP) § 609.06は、出願人および審査官が引用した文献がどのように掲載されるかを説明する一方、引用文献が掲載されていなくても考慮されている場合があり、その場合には出願記録が考慮の事実を示すことも認めている。U.S. Patent & Trademark Office, Manual of Patent Examining Procedure § 609.06 (9th ed. Rev. 01.2024, Nov. 2024). したがって、審査官がイニシャルを付したIDS、PTO-892、オフィス・アクション、面接要約書、引用文献通知、その他の審査書類から成る審査経過は、特許公報の表紙面だけよりも、実際に何が行われたかを示す優れた証拠となる。
さらに、特許公報に記載されているからといって、特許庁が当該文献を重要と判断したこと、クレームに適用したこと、または当該文献についての何らかの評価を受け入れたことが立証されるわけではない。IDSに関する規則は、情報開示陳述書(IDS)の提出を、陳述書で引用された情報が特許性にとって重要である、または重要であるとみなされることを認めたものと「解してはならない(“shall not be construed to be an admission that the information cited in the statement is, or is considered to be, material to patentability”)」と明示している。37 C.F.R. § 1.97(h). したがって、表紙面への引用文献の記載は、提示または考慮の事実を立証し得るが、それだけで実質的な検討が行われたことまで立証するものではない。
同じ区別は、PTAB以外の場面でも重要である。発行されたすべての特許には、特定の文献がその表紙面に記載されているか否かにかかわらず、法律上の有効性の推定が及ぶ。35 U.S.C. § 282(a). 審査官に提示されていなかった証拠は、連邦地方裁判所における訴訟でより大きな説得力を持つ場合があるが、明白かつ説得力のある証拠という立証責任を変更するものではない。Microsoft Corp. v. i4i Ltd. P’ship, 564 U.S. 91, 110–11 (2011). これに対し、§ 325(d)が問うのは、IPR開始段階における別の問題、すなわち、同一または実質的に同一の先行技術若しくは主張が特許庁に従前提示されていたか、そして、提示されていた場合には特許庁が対象クレームの特許性に関して重要な誤りを犯したかという問題である。
II. MPEP § 609.02と継続出願の記録
特許公報の表紙面に依拠する考え方が継続特許についてとりわけ信頼できない理由は、MPEP § 609.02にある。37 C.F.R. § 1.53(b)に基づき提出された継続出願、分割出願または一部継続出願について、MPEPは、審査官が「親出願において特許庁が考慮した情報を考慮する(“will consider information which has been considered by the Office in a parent application”)」と定めている。さらに、出願人が当該情報を発行される特許に掲載することを希望しない限り、継続出願においてその情報の一覧を再提出する必要はないと定めている。MPEP § 609.02(I), (II)(A)(2) (9th ed. Rev. 01.2024, Nov. 2024).
この手続により、考慮されたことと特許公報に掲載されたこととの間に、意図的な隔たりが生じる。たとえば、親に当たる継続出願で審査官がIDSにイニシャルを付し、その後、出願人が当該親出願の利益を主張する更なる継続出願を行ったとする。§ 609.02の下では、子出願の審査官に当該文献を提示するためだけに、出願人がその文献を再度列挙する必要はない。しかし、出願人が再度列挙しなければ、その文献は子特許に記載されない可能性がある。したがって、子特許の表紙面に当該文献がないことは、考慮済みの情報を後続出願へ引き継ぐ特許庁の手続と完全に整合する。
この引継ぎの規則には限界がある。それが適用されるのは、親出願で実際に考慮された情報であって、単に提出されたものの考慮されないままであった情報ではない。親出願で提出されたものの考慮されなかった情報については、子出願で確実に考慮を受けるため、通常、37 C.F.R. §§ 1.97 and 1.98に従って再提出しなければならない。MPEP § 609.02(II)(B)(2). MPEPはまた、米国を指定する国際出願に由来する文献について、異なる手続を定めている。すなわち、国際調査報告または国際予備審査報告で引用された文献が確実に考慮されるようにするためには、出願人は、継続する米国出願において規則に適合する情報開示陳述書(IDS)を提出しなければならない。MPEP § 609.02(I).
法的権威の程度については留保もある。MPEPは行政機関の指針であり、法律または規則ではなく、それ自体が法的拘束力を有するものではない。In re Skvorecz, 580 F.3d 1262, 1268–69 & n.3 (Fed. Cir. 2009). しかし、このことは§ 609.02が無関係であることを意味しない。同条は、特許庁自身の審査手続を記述するものであり、PTABの合議体は、継続出願において特許庁が考慮すべき事項を判断するために同条に依拠してきた。したがって、§ 325(d)との関係では、MPEPは、特許庁の実務を示す証拠であるとともに、直系の先行出願の記録と対象となる継続出願とを結ぶ手続上の架橋として機能する。
また、§ 325(d)以外の文脈では、引継ぎの実務について限定的ながら控訴審レベルの裏付けもある。不衡平行為(inequitable conduct)が問題となった事件で、連邦巡回控訴裁判所はMPEP § 609に依拠し、親出願で引用または提出された情報を分割出願で再提出しなかったことは、不衡平行為を構成し得ないと判示した。ATD Corp. v. Lydall, Inc., 159 F.3d 534, 547 (Fed. Cir. 1998). ATDは§ 325(d)の問題に答えるものではないが、特許庁の継続出願手続の下で情報を再提出しないことは、子出願の審査官に当該情報を秘匿することと同義ではないことを確認している。
III. Advanced BionicsおよびEcto World以後の§ 325(d)
§ 325(d)は、USPTO長官(Director)に対し、“the same or substantially the same prior art or arguments previously were presented to the Office.”(「同一または実質的に同一の先行技術若しくは主張が、以前に特許庁に提示されていた」)ことを理由にIPR開始を拒否する裁量を付与している。35 U.S.C. § 325(d). Advanced Bionics, LLC v. MED-EL Elektromedizinische Geräte GmbH, No. IPR2019-01469, Paper 6, at 7–11 (P.T.A.B. Feb. 13, 2020) (precedential)において、審判部はこの裁量判断を2段階に整理した。
第1段階では、審判部は、同一または実質的に同一の先行技術若しくは主張が以前に特許庁に提示されていたかを検討する。“Previously presented”は、「拒絶に用いられた」よりも広い概念であり、審査官が審査記録に組み入れた先行技術と、出願人が情報開示陳述書(IDS)で提出した先行技術の双方を含む。Id. at 7–8. 第1段階の要件が満たされる場合、第2段階では、申立人が、特許庁が対象クレームの特許性に関して重要な態様で誤ったことを立証したかを検討する。Id. at 8–9. 審査官の判断に合理的な異論があり得るというだけでは足りず、主張される誤りは特許性に関して重要でなければならない。
Becton, Dickinsonで示された周知の6要素は、この2段階の枠組みの中で機能する。要素(a)、(b)および(d)、すなわち先行技術および主張の類似点と相違点は、一般に第1段階の判断に関係する。要素(c)、(e)および(f)、すなわち先の審査における検討の程度、申立人による誤りの立証、および再検討の要否に関わる追加的事情は、一般に第2段階の判断に関係する。Becton, Dickinson & Co. v. B. Braun Melsungen AG, No. IPR2017-01586, Paper 8, at 17–18 (P.T.A.B. Dec. 15, 2017) (precedential as to § III.C.5, first paragraph; otherwise informative); Advanced Bionics, Paper 6, at 9–11.
USPTO長官による先例拘束力を有する審決であるEcto World, LLC v. RAI Strategic Holdings, Inc., No. IPR2024-01280, Paper 13, at 3–7 (Dir. May 19, 2025) (precedential as to § A)は、IDSに記載された先行技術の取扱いを一層明確にした。審査官がイニシャルを付した情報開示陳述書(IDS)により以前に提示されていた同一の先行技術を用いる場合、審査官が当該先行技術を拒絶に適用も論評もしていなくても、第1段階の要件は満たされる。Id. at 3–4. その場合、申立人は、特許性に関して重要な特許庁の誤りを明示的かつ具体的に論じなければならず、本案についての一般的な主張をもって第2段階の分析に代えることはできない。Id. at 5–6. 他方、IDSの規模および提出時の事情が考慮される場合もある。1,000件を超える文献を列挙したIDSであり、かつ、審査官が関連性に関する情報を求めた後も出願人が協力しなかったという事情があれば、Becton, Dickinsonの要素(f)の下で、§ 325(d)に基づくIPR開始の裁量的拒否に不利に働き得る。Id. at 6–7.
この枠組みから、重要な区別が導かれる。審査官がある文献を実質的に用いたか否かは、通常、第1段階の結論を左右しない。しかし、その事実は、第2段階における主張の実務上の説得力を大きく左右することが多い。
IV. 親出願の審査記録が決め手となる場合
§ 325(d)に基づく主張が最も強くなるのは、審査官が直接の親出願の審査経過において申立てで援用された先行技術を実際に適用し、親出願と子出願の各クレームが実質的に類似する範囲を有し、かつ、IPR申立書が審査官の分析を実質的に繰り返している場合である。
Becton, Dickinsonは、まさにこのような事案であった。直接の親出願の審査過程において、2件の文献がそれぞれ別個の自明性拒絶に適用されていた。継続出願のクレームは親出願のクレームと類似する範囲を有し、ターミナル・ディスクレーマーにより両者のクレームが関連付けられ、IPR申立書は審査官がすでに検討した先行技術と論理構成を主として組み替えたものにすぎなかった。Becton, Dickinson, Paper 8, at 16–18, 22–28. 審判部は、その点を根拠として§ 325(d)に基づきIPR開始を拒否した。もっとも、正式に先例拘束性を有する(precedential)のは、§ III.C.5の冒頭段落、すなわち6要素の定式化のみであり、親出願の審査経過に関する分析を含む判断の残部は、正式には参考指定(informative)である。
その後の複数の非先例判断も、同じ論理を示している。Johnson & Johnson Surgical Vision, Inc. v. Alcon, Inc., No. IPR2021-00899, Paper 16, at 2–3 n.1, 20–22, 33–38 (P.T.A.B. Nov. 9, 2021)では、親出願と継続出願の明細書の記載が同一であることについて当事者間に争いがなく、審判部は、親出願の審査経過を評価対象とするという当事者の整理を採用した。審査官は、3年を超える期間にわたり、7度の拒絶、面接、アドバイザリー・アクション、および審判請求前会議を通じて、主要文献を繰り返し検討していた。審判部は、申立てで援用された先行技術および主張が同一または累積的であると認定し、申立人が特許性に関して重要な特許庁の誤りを特定できなかったため、IPR開始を拒否した。Gator Bio, Inc. v. Sartorius Bioanalytical Instruments, Inc., No. IPR2023-00215, Paper 19, at 11–22 (P.T.A.B. June 20, 2023)では、審判部は親出願と子出願の審査経過を“intertwined”(「密接に絡み合っている」)と評した。すなわち、親出願において先行技術が広範に適用され、対象クレームはターミナル・ディスクレーマーにより関連付けられ、かつ、いずれの当事者も親出願の審査記録を考慮することに異議を述べなかった。この事案でも、申立人は、特許性に関して重要な特許庁の誤りを立証できなかった。
しかし、親出願で検討されたという事実自体が、エストッペル(estoppel)を生じさせるわけではない。Oticon Medical AB v. Cochlear Ltd., No. IPR2019-00975, Paper 15, at 9–10, 15–20 (P.T.A.B. Oct. 16, 2019) (precedential as to §§ II.B–II.C)では、親出願の審査における先行技術および拒絶が考慮されたものの、IPR開始拒否には至らなかった。新たに援用された文献が、従前の審査記録には存在しなかった、実質的に異なり、かつ累積的ではない教示を提供していたためである。したがってOticonは、限界を画する先例拘束的原則を示している。すなわち、親出願で広範な審査が行われていても、申立てによって先行技術または分析が実質的に変更される場合には、IPR開始は妨げられない。
これらの判断が示すとおり、“the reference was cited in the parent”(「当該文献は親出願で引用されていた」)という事実は、議論の出発点にすぎない。説得力のある§ 325(d)の記録を構築するには、親出願における審査と対象クレームとを結び付ける必要がある。その結び付きを示す有用な証拠には、クレーム文言の重複、同一の明細書、自明型二重特許を理由とする拒絶、ターミナル・ディスクレーマー、共通する審査担当者、親出願の審査記録の明示的な援用、そして何よりも、後にIPR申立書で重視された特定の教示を特許庁がどのように取り扱ったかが含まれる。
V. 親出願または直系の先行出願のIDSでのみ提示された先行技術
より難しい問題は、親出願の情報開示陳述書(IDS)に記載され、審査官がイニシャルを付したものの、拒絶には一度も用いられなかった文献が、子出願の審査経過において「以前に提示された(previously presented)」といえるかである。この問題を最も直接に扱った判断は、Google LLC v. Kewazinga Corp., No. IPR2021-00527, Paper 16, at 10–13, 18–21 (P.T.A.B. Aug. 24, 2021) (nonprecedential)である。
Kewazingaでは、申立てで援用された複数の文献が、対象特許の直系の先行出願における、審査官がイニシャルを付したIDSに記載されていた。別の援用文献Moezzi-1については、IDSにその親特許が記載されていたが、両者の明細書および図面がほぼ同一であり、申立てが依拠する開示も親特許に存在していたことから、審判部は両文献が実質的に同一であると認定した。Id. at 10–13. 審判部はMPEP § 609.02に依拠し、特許庁が先行出願においてこれらの文献を検討していた以上、出願人が対象特許に印刷掲載するために文献を再掲していなかったとしても、継続出願の審査官はそれらを検討しなければならなかったと判断した。Id. at 10–12. 同一審査官の関与、二重特許拒絶、およびターミナル・ディスクレーマーも、各出願の審査相互の結び付きを一層強めていた。審判部は、これらの文献が直系の出願系列内であっても遠すぎるとの申立人の主張を退け、文献は以前に提示されていたと認定し、さらに申立人が特許性に関して重要な特許庁の誤りを具体的に特定できなかったことから、IPR開始を拒否した。Id. at 12–13, 18–21.
Kewazingaは、特許公報の表紙面への記載という問題に最も直接的な答えを与える。適切な継続出願の審査記録があれば、先行技術が対象特許に記載されていなくても、§ 325(d)上考慮され得る。しかし、Kewazingaは非先例の合議体判断であり、その判示を、すべての直系の先行出願のIDSに適用される拘束力ある一律のルール(per se rule)として読み替えるべきではない。
現時点で最も妥当な整理は、KewazingaとEcto Worldを組み合わせて理解することである。Kewazingaは、MPEP § 609.02の下で、直系の先行出願において検討された先行技術を子出願にも引き継いで扱うことを支持する説得的権威である。Ecto Worldは、先行技術が実質的に適用されていなくても、IDSで提示されたこと自体で第1段階の要件が満たされるという、特許庁を拘束する先例である。ただし、Ecto Worldが扱ったのは、対象特許自体の審査経過におけるIDSであり、親出願から子出願への承継という問題を明示的に判断したものではない。両判断を併せれば、米国内の直系の先行出願において審査官がイニシャルを付したIDSは第1段階の要件を満たすとの強力な主張が可能となるが、親出願IDSに関する先例拘束的な規則が確立されたわけではない。
この区別は第2段階で重要となる。IDSによる提示のみでは、理由を示した拒絶、出願人の応答、面接、または特許査定理由と比べ、特許庁が何を理解していたかを示す証拠としての力は弱い。特許権者は、審査官が当該文献を論じていない場合であっても、Ecto Worldにより、特許性に関して重要な特許庁の誤りを特定する責任は申立人に課されると主張できる。他方、申立人は、審査官が見落としたとみられる具体的な開示を特定し、それが明示された特許査定理由と矛盾する理由を説明し、さらに申立てで主張する組合せまたは証拠が単に累積的なものではないことを示すことにより、その責任を果たし得る。新たな専門家宣誓書は、それだけで必ずしも誤りを立証するものではない。分析は、先行技術が何を教示していたのか、そして特許庁が何を行い、または行わなかったのかに立ち返らなければならない。
VI. 直系の先行出願、兄弟出願および遠い傍系出願
判例法は、ある特許「ファミリー」内のすべての審査経過が、同ファミリー内の他のすべての出願に関係するという、文脈から切り離された一律の原則を支持していない。法的および証拠上の結び付きが最も強いのは、MPEP § 609.02が対象とする直系の優先権系列である。兄弟出願については個別の事実関係に左右され、遠い傍系出願についてはその結び付きは弱い。
Guardant Health, Inc. v. Univ. of Wash., No. IPR2022-00449, Paper 13, at 10, 15–18 (P.T.A.B. Aug. 1, 2022) (nonprecedential)は、兄弟出願についての例外的な事案を示している。同事件で問題となったのは、兄弟出願の情報開示陳述書(IDS)ではなく、兄弟出願における先行する主張であった。対象出願とその兄弟出願はいずれも同一の親出願から派生する継続出願であり、同一の明細書を共有し、同じ審査官によって同時期に審査され、審判部が範囲上同一とみたクレーム文言を含んでいた。対象出願の審査経過には、その兄弟出願に基づく自明型二重特許拒絶も含まれていた。このように異例に緊密に結び付いた記録の下で、審判部は兄弟出願における主張を“previously presented”(以前に提示された)ものとして扱った。Guardantは、兄弟出願の審査経過が当然に引き継がれるという原則を確立したものではない。
この法理の外縁を示すのがEVE Energy Co., Ltd. v. VARTA Microbattery GmbH, No. IPR2023-00121, Paper 12, at 12–15 (P.T.A.B. May 12, 2023) (nonprecedential)である。審判部は、Kewazingaを引用しつつ、対象特許に関係する手続には親出願および直系の先行出願が含まれ得ると認めたが、その論理を遠い傍系出願に属する特許まで拡張することを拒んだ。2件の特許は、共通のドイツ出願から、それぞれ別個のPCTおよび米国出願系列を経て派生しており、審判部は印象的にも両者を“second cousins, three times removed”と表現した。遠い共通祖先を有するというだけでは、傍系出願の審査を対象特許に関係する手続とするには足りなかった。Id. at 12–14. 申立てで援用された文献は、これとは別に、対象出願自体の情報開示陳述書(IDS)にも記載されていたため、その点を根拠に第1段階は充足された。しかし審判部は、特許性に関して重要な特許庁の誤りを認定した上で§ 325(d)に基づくIPR開始の裁量的拒否を行わず、さらに申立人が勝訴する合理的な見込みを示したと結論付けた。Id. at 14–15.
実務上の教訓は、「ファミリー」であるということ自体は決め手となる事実ではない、という点である。この主張をする当事者は、以前の記録から対象特許に至る手続上および実体上の経路、すなわち、先行出願の出願日の利益を受ける旨の直接の主張、直系の先行出願における考慮、クレームの連続性、審査官の認識、ならびに以前の主張と現在の主張との重複を立証すべきである。遠い共通祖先出願が存在するだけでは、この立証には足りない可能性が高い。
VII. § 325(d)の主張を立証・反駁する方法
特許権者にとって、最も効果的なのは、記録に基づく証明の連鎖を示すことである。第1に、該当する範囲で35 U.S.C. §§ 120–121に基づく直系の出願関係を立証し、関係する各出願を特定する。第2に、表紙面に依拠するのではなく、実際に考慮されたことを立証する。すなわち、審査官のイニシャルが付された情報開示陳述書(IDS)、PTO-892、オフィス・アクション、面接要約書、またはその他の審査経過資料を提出する。第3に、親出願と子出願のクレームを対応付け、二重特許拒絶、ターミナル・ディスクレーマー、共通の審査官、または共通する特許査定理由など、各審査が相互に関連していたことを示す事実を特定する。第4に、IPR申立ての論旨を特許庁による従前の分析と比較する。最後に、IPR申立てが特許性に関して重要な特許庁の誤りを何ら特定していない理由を説明し、第2段階に明示的に取り組む。
申立人にとって、最も説得力に乏しい反論は、引用文献が対象特許の表紙面に掲載されていないというものである。MPEP § 609.02および直系の先行出願の審査経過資料が当該文献の考慮を示している場合、その反論は、特許公報への掲載と特許庁への提示とを混同している。より説得力のある申立書は、第1段階が充足され得ることを前提に、第2段階の議論を十分に展開すべきである。具体的には、審査官が見落とし、または誤解した文献中の教示を正確に特定し、親出願から子出願への実質的なクレーム変更があれば説明し、新たな引用文献または組合せが単なる累積ではない理由を示し、さらに、主張する誤りを記録上の特許査定理由と結び付けるべきである。関係する情報開示陳述書(IDS)が例外的に大部であった場合、または出願人が関連する教示を見いだすための手掛かりを審査官にほとんど提供しなかった場合、Ecto Worldによれば、それらの事実も考慮の対象となる。
出願実務家にとって、MPEPは、親出願で考慮された先行技術を再提出せずに子出願へ引き継ぐことを認めている。しかし、許容されているからといって、訴訟を見据えた慎重な実務として常に妥当であるとは限らない。簡潔で要件に適合する情報開示陳述書(IDS)を再提出すれば、当該引用文献を子特許の表紙面に掲載させ、考慮された経路をめぐる後日の事実争いを排除し得る。他方、特許ファミリー全体の膨大なIDSを継続出願に無差別に再収録すると、審査官が個々の文献を実質的に検討したとの実務上の推認を弱め、Ecto Worldの要素(f)に関する問題を生じさせるおそれがある。また、手数料上の影響もあり得る。2025年1月19日以降に37 C.F.R. § 1.97に基づいて提出されるすべてのIDSには、§ 1.98(a)(4)に基づくサイズ手数料についての書面による申告が必要であり、出願人が提出した項目の累計が50、100、または200を超えることとなるIDSには、§ 1.17(v)に基づく該当する段階の手数料が課される。親出願の項目は、出願人が子出願で再提出しない限り、子出願の件数には算入されない。U.S. Patent & Trademark Office, Quick Reference Guide to the Information Disclosure Statement (IDS) Size Fee and Size Fee Assertion 1, 3–4. 適切な実務は、意図的かつ選択的であるべきである。すなわち、何が考慮されたかを示す証拠を保存し、表紙掲載または記録の明確化が重要な場合には再提出し、国際出願を親出願とする場合の文書に関する特則を遵守するとともに、傍系ファミリーの審査経過が子出願の記録の一部として扱われると安易に前提とすべきではない。
VIII. 拘束力を有する事項と、なお未解決の事項
判例および審決の権威の序列は、特に重視する必要がある。Advanced Bionics、Becton, Dickinsonの指定部分、Oticon (precedential as to §§ II.B–II.C)、およびEcto Worldの§ Aは、審判部において先例拘束性を有する。Kewazinga、Johnson & Johnson、Gator Bio、Guardant、およびEVE Energyは、説得的権威を有する非先例判断である。親出願でのみ考慮された先行技術が、子特許を対象とするIPRにおいて§ 325(d)上“previously presented”(以前に提示された)といえるかを正面から判断した連邦巡回控訴裁判所の本案判決は、見当たらない。
この上訴審判例の空白は、驚くに当たらない。IPR開始決定は、一般に35 U.S.C. § 314(d)により上訴できないからである。Cuozzo Speed Techs., LLC v. Lee, 579 U.S. 261, 273–75 (2016); Thryv, Inc. v. Click-to-Call Techs., LP, 590 U.S. 45, 54 (2020); Mylan Lab’ys Ltd. v. Janssen Pharmaceutica, N.V., 989 F.3d 1375, 1382–83 (Fed. Cir. 2021). 連邦巡回控訴裁判所は、連続的なIPR申立て後の査定系再審査を含む別の手続状況において§ 325(d)を扱っているが、その判例は、IPR開始判断における親出願の審査経過に関する一般則を確立するものではない。See In re Vivint, Inc., 14 F.4th 1342, 1350–54 (Fed. Cir. 2021).
実務家は、撤回された“meaningfully addressed”(実質的に取り上げられた)との提案に依拠することも避けるべきである。2024年4月、USPTOは、先行技術が審査官のイニシャル付き情報開示陳述書(IDS)に記載されていたというだけでは“previously presented”(以前に提示された)ものとは扱わず、当該先行技術または主張が“meaningfully addressed”されていることを要求する規則案を公表した。Patent Trial and Appeal Board Rules of Practice for Briefing Discretionary Denial Issues, and Rules for 325(d) Considerations, Instituting Parallel and Serial Petitions, and Termination Due to Settlement Agreement, 89 Fed. Reg. 28,693, 28,701, 28,705 (proposed Apr. 19, 2024). USPTOは、この規則案を2025年10月17日付けで撤回した。Patent Trial and Appeal Board Rules of Practice for Briefing Discretionary Denial Issues, and Rules for 325(d) Considerations, Instituting Parallel and Serial Petitions, and Termination Due to Settlement Agreement, 90 Fed. Reg. 48,342 (Oct. 17, 2025) (withdrawal). 現在の審判部の法理はEcto Worldである。情報開示陳述書(IDS)による提示で第1段階は充足される一方、考慮の深度およびその状況は、特許性に関して重要な特許庁の誤りの有無と裁量判断上の衡量において、なお関連性を有する。
結論
引用文献は、特許庁に“previously presented”(以前に提示された)ものと認められるために、対象特許の表紙面に掲載されている必要はない。直系の継続出願系列では、出願人が公報掲載のために引用文献を再提出しなかった場合であっても、MPEP § 609.02により、親出願で考慮された先行技術が子出願へ引き継がれ得る。Kewazingaはこの原則を直接適用しており、Ecto Worldはさらに広く、情報開示陳述書(IDS)に記載された先行技術がAdvanced Bionicsの第1段階を充足するために、拒絶の根拠として実際に用いられている必要はないことを確認している。
しかし、“previously presented”(以前に提示された)ということは、“fully evaluated”(十分に評価された)ことを意味せず、ましてや“immune from reconsideration”(再検討を免れる)ことを意味しない。決定的な分析は、しばしばAdvanced Bionicsの第2段階で行われる。実質的に類似するクレームを対象とし、理由を示した親出願での拒絶は、§ 325(d)に基づくIPR開始の裁量的拒否を強く支持し得る。他方、審査官のイニシャルが付された情報開示陳述書(IDS)の証明力はより限定的であり、遠い傍系出願の審査経過は何も立証しない場合すらある。したがって、適切な分析は審査経過から出発し、実際の優先権関係および審査上の結び付きをたどった上で、単に何が特許公報の表紙面に掲載されたかではなく、特許庁が何を理解していたかを問うものでなければならない。





